製造業がDXで躓く3つの段階 — 受発注・生産・原価
岐阜県では県民の約4人に1人が製造業に従事しており、金属加工・自動車部品・産業機械・航空機部品・ファインセラミックス・刃物・美濃焼など、多様な中堅・中小製造業がサプライチェーンを支えています。多くの経営者が「DXをやらなければ」と感じている一方で、実際に動き始めた企業の多くは決まった3つの段階で躓いています。
受発注・生産・原価 — この記事では、それぞれの段階で何が起きているのかを、実データとともに整理します。
なぜ「3段階」で躓くのか

中堅製造業の業務フローは「受注 → 生産 → 原価把握」が骨格です。どこか1ヶ所だけデジタル化しても、前後がアナログだと効果が連動しません。
経済産業省の調査では 大型ITプロジェクトの60%以上が予算超過や納期遅延 に陥っています。原因の多くは「全社一気に変えようとした」か「特定部署だけ先行して孤立した」ケース。段階ごとに整理して進める のが現実的なアプローチです。
段階1: 受発注 — FAXとExcelが消えない構造
中小企業庁の調査では 中小企業の約76%がFAXを受発注業務に使用 しており、製造業全体ではアナログ受注が 85.8%、デジタル受注は 14.2% のみという結果も出ています。三重県の蛇腹メーカーでは年間2万件の受注のうちEDIは40%、残り60%はFAXとメールです。
「FAXをやめたい」と思っている中小企業は多いものの、得意先に「やめてほしい」と言える立場ではない のが構造的な問題です。下請けは発注側のやり方に合わせるしかなく、自社だけでデジタル化を完結できません。
段階的アプローチ
- 社内側の受発注台帳をクラウド化 — まず自社内でデータを構造化
- 得意先別フォーマットの自動取り込み — OCR/AIで構造化
- EDI連携または顧客ポータル化 — 取引先の準備が整った順に
最初から3を目指さないこと。1だけで入力ミス・属人化・検索性は劇的に改善します。
段階2: 生産 — ホワイトボードと紙の限界
岐阜の中堅製造業の多くは生産進捗を ホワイトボードや紙の管理板 で運用しています。日本能率協会コンサルティングは、生産進捗ボードがあっても「町の掲示板」のように形骸化し、遅延が発生していても監督者の指示が出ないケースが多いと指摘しています。
具体的な問題:
- 記入・転記で最新情報が半日〜1日遅れる
- 担当者しか読めない記号・略語で属人化する
- 機械の稼働状況がリアルタイムで分からない
- ベテランの暗黙知が引き継がれずに引退する
段階的アプローチ
- 工程進捗のタブレット入力化 — 手書きをやめる
- 設備稼働データのIoT収集 — 機械の状態を自動取得
- 生産計画の最適化 — 蓄積データを活用、AI計画立案
1ができるだけで現場の見え方が一段変わります。
段階3: 原価 — 「赤字製品があっても気づけない」
中小製造業の原価管理は どんぶり勘定 が常態化しがちです。会社全体の損益は出るが、製品ごとの個別原価が把握できていない状態です。「赤字の製品があるかもしれないが、調べようがない」というのは中小製造業に共通する構造的な課題で、多品種少量生産が中心の岐阜の中堅製造業では特に顕著です。
具体的な症状:
- 何年も同じ価格で販売(原材料高騰時の値上げ判断ができない)
- 営業担当が「感覚」で値下げ交渉に応じる
- 月末締めから1〜2週間後に粗利が見える(意思決定が遅い)
- Excel集計が属人化、担当者休むと原価が出ない
結果として「売れているのに利益が出ない」状態になり、安値受注が常態化します。
段階的アプローチ
- 工程ごとの実績工数を記録 — まずデータを集める
- 個別原価計算の自動化 — 生産データと連動
- リアルタイム原価ダッシュボード — 経営判断に直結
失敗する企業の共通点
DX投資で挫折する企業の共通点は明確です。
- いきなり全社統合システムを目指す — 60%以上が破綻する原因
- ベンダーに丸投げする — 業務を理解しないまま要件定義され、後で「使えない」となる
- 現場を巻き込まない — 入れたシステムが使われない
成功している企業は 小さく始めて勝ち筋を見てから広げる スタイルを徹底しています。
DXの分岐点は「業務に入り込めるエンジニア」と組めるかどうか
受発注・生産・原価のどの段階で躓いているかを、現場と経営が同じ言葉で語れる会社は、DXに成功しています。逆に「とにかくDXを進めなきゃ」という掛け声だけで動き出した会社は、ツール導入が目的化して60%の予算超過・遅延の山に飲み込まれていきます。
要件定義書を待つだけのベンダー、決まったパッケージを売るだけのSIer、コードだけ書く下請け — これらでは、製造業の業務に染み付いた細かい現実は捕まえきれません。必要なのは、事業の現場に深く入り込み、経営課題から逆算してシステムを設計できるエンジニア です。
事業に入り込めるエンジニアと組むという選択肢
そうしたエンジニアと社内だけで組めない場合は、外部に伴走させる選択肢が現実的です。
Arintiは、IT事業会社でプロダクト開発や事業推進を経験してきたエンジニアで構成された、DX・開発支援会社です。システムを開発して納品するだけでなく、事業成果の達成まで見据え、事業視点でDX・開発支援 を行っています。実際に開発を行うエンジニア自身が、課題整理・業務設計・技術選定・開発まで一貫して担当することで、事業理解と実装を分断しない開発体制を実現しています。業務DX、システム開発、アプリ開発、データ基盤構築、AI活用、プロダクト開発まで、事業に必要な仕組みを一気通貫で支援します。
DX支援に関するご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
▼会社HPはこちら

よくある質問
Q. 中堅製造業がDXを始めるべきタイミングはいつですか?
受発注・生産・原価のいずれかで属人化や情報の遅延が顕在化したときが適切なタイミングです。大型ITプロジェクトの60%以上が予算超過・納期遅延に陥るため、全社一気ではなく躓いている段階から着手するのが現実的です。
Q. 受発注のデジタル化は何から始めればいいですか?
まずは社内側の受発注台帳をクラウド化し、データを構造化することから始めるのが現実的です。中小企業の約76%がFAXを受発注に使っており、得意先都合でFAXが残ることが多いため、自社側で完結できる範囲から進めるのが効果的です。
Q. 生産管理を紙やホワイトボードからデジタルに変えるメリットは何ですか?
記入・転記による半日〜1日の情報遅延を解消でき、担当者しか読めない記号や略語による属人化も防げます。工程進捗のタブレット入力化だけでも、現場の見え方が大きく変わります。
Q. 原価管理を見える化するメリットは何ですか?
どんぶり勘定では赤字製品があっても気づけず、安値受注が常態化しがちです。工程ごとの実績工数を記録して個別原価を把握できれば、値上げ判断や値下げ交渉、製品ごとの収益性に基づく意思決定ができるようになります。
Q. DXは全社一気に変えるべきですか、段階的に進めるべきですか?
段階的に進めるのが現実的です。大型ITプロジェクトの60%以上が予算超過・遅延に陥る主因は、全社一気に変えようとしたり特定部署だけ先行して孤立したりするケースで、小さく始めて勝ち筋を見てから広げるアプローチが有効です。
